子供の頃、音楽はとっても高価な存在やった。
音楽を聴くまでの準備が多く必要で、
その段階の最後にレコードの針をそっと置く。
サー、プツプツ、サーと、ノイズが聞こえはじめ、
音が鳴りはじめるまでのあのドキドキがたまらなかった。
一本の針が、俺と世界を繋ぎ、
まだみぬ世界へと連れ出してくれる。
時代は変わり、
そこに置いてあるiPhoneの画面をさわるだけで
聞きたい音を探し出して、音が流れ出す。
人は音を機械に押し込み、持ち歩きながら、
空気を吸うように無意識に脳に流し込む
耳には当時と同じものが入ってきてるはずやのに、
何か少し寂しい、何かが。
何かたりない気がする。
もちろん、いまでも、音を選んでから、
音が鳴り出すまでのわずかコンマ数秒でも、
あのドキドキは健在している
大人になって、時代が流れ、音楽が身近になるにつれて、
高価な存在ではなくなってしまった。
それはとてもいいことである。
が、何か寂しい。
人と人の繋がりも、便利になるほど、
薄くなってるようなところもあって、さみしくなる。
それでも、メルが来るだけでドキドキしたり
な、新しい感覚も生まれながら。
街も、生活も、人付き合いも。
時代とともに価値観も変わる。
携帯電話やインターネットは便利すぎて怖くなる。
しかし、そのツールをよくするのも悪くするのもやはり使い手、自分次第。
こうして、誰にでも気軽に音楽が染み渡り、
自分の意思表示を誰かに共感してもらえるこの時代は
とても素敵で優しく、どこかもどかしい。
今日も誰かと繋がる喜び。
ありがとう。